読書 「深い河」 遠藤周作
図書館で手にしたこの本、読んでいる途中でかなり以前に観た映画を思い出しました。秋吉久美子さんが出演してた映画で調べてみたら1995年にこの原作で映画化されていました。映画館では、感動もなく途中寝てしまった記憶で、それ以後思い出した事もなかったのに18年ぶりに今回原作を読んでみました。
(あらすじ)
磯辺は中年のサラリーマン。彼は妻を失い、その臨終の言葉から「必ず生まれ変わるから、私を探して……」と言い残したのだ妻が再生してほしいという願いにとり憑かれている。インドのある場所に生まれ変わったという妻を求めて、彼はツアーに参します。
ツアーで偶然妻の臨終を看取ってくれた女性、成瀬美津子に巡り会う
。
成瀬美津子は大津という神を選んだ男への関心を棄てることができない。インドに行こうと思い立ったのも、大津というその昔、彼女のほうから見捨てた男への関心からであった
大津はカトリックの司祭であるが、今はヒンズー教徒たちのために生きている。彼は心においてはキリストを念じながら、聖なる河ガンジスを死に場所と心得ていて、貧しい人々を火葬場に運んで遣る仕事に従事している。
沼田は童話作家。結核を再燃し、入院しているときに飼っていた心の癒しだった九官鳥への想い、インドには多くの野生保護区が存在することを知る。せめてもの九官鳥へのお礼に、インドで一羽の九官鳥を求め保護区に放してやる事を思い立ち、ツアーに参加
木口は、戦時中にビルマの作戦に参加したことがあり部隊に居た戦友の塚田に救われる。月日が経ちお互いに老人になり、東京にいる木口のもとに職を失った塚田が訪れて再会を果たす死期が近づいた塚田は、初めて人間を食べた事、その辛さ、それに捉われて生きた戦後を告白する。木口は塚田や他の戦友を弔うため、仏教の発祥地である印度へのツアーに参加する。
ツアーのガイド
江波 印度哲学を専攻して4年間印度へ留学した経験があり、印度へ深い理解と愛着を持つ。
三条夫妻 ツアーに参加した今時の若い夫婦
インド・ツアーに参加する登場人物たちの内面に重ね合わせた文章で物語が展開しています。
読んでいてもっとも印象的だったのが死をつかさどる女神チャームンダーのくだり
「彼女“チャームンダー”の乳房はもう老婆のように萎びています。
でもその萎びた乳房から乳を出して、並んでいる子供たちに与えています。
彼女の右足はハンセン氏病のため、ただれているのがわかりますか。
腹部も飢えでへこみにへこみ、しかもそこには蠍(さそり)が噛みついているでしょう。
彼女はそんな病苦や痛みに耐えながらも、萎びた乳房から人間に乳を与えているんです」
「彼女は・・印度人の苦しみのすべてを表しているのです。
長い間、印度人が味わわねばならなかった病苦や死や飢えがこの像に出てます。
長い間、彼等が苦しんできたすべての病気にこの女神はかかっています。
コブラや蠍の毒にも耐えています。それなのに
彼女は・・・喘ぎながら、萎びた乳房で乳を人間に与えている。
これが印度です。」・・・
大津が成瀬美津子に送った手紙文
「神とはあなたたちのように人間の外にあって、しかも人間を包み、木を包み、草花をも包む、あの大きな命です」と
人が受ける苦しみを一身に背負うこの「チャームンダー」の姿は、あの「キリスト」と同じです。死が訪れた時、その死体の灰を河に流されれば輪廻から開放されるのだという「ガンジス河」。
「深い河」という題名自体がインドの母なる河ガンジスを指すと同時人それぞれの中にある深い河を表している。若い時には気がつかなかった、今だからこそ、その意味を理解できる気がする。私にとってめぐりあわせの本かも知れない......読み応えのある作品でした。
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